歯ならび・かみ合わせが悪くなる原因は?
近年、歯ならび・かみ合わせに何らかの問題を持った子どもたちが大半を占めるようになってきました。
歯ならび・かみ合わせの異常は、ほとんどが遺伝ではありません。遺伝であれば、急激に増えることはありません。
様々な理由により、歯ならび・かみ合わせは悪化します。
主な原因
最も重要な原因・・・幼少時からの舌と唇の機能異常
・ 口呼吸
・ 唇を閉じずにポカンと口が開いたまま(口唇閉鎖不全)
・ 舌の癖(舌が下に落ち込む・前に押し出す)
・ 異常な飲み込み癖(異常嚥下癖)
・ 姿勢が悪い
以上の要因が歯ならび・かみ合わせに最も重大な影響を及ぼします。
矯正治療を行う場合、この問題を同時に改善しておかないと、いったんきれいに並んだ歯ならびが再び悪くなる『後戻り』が起こります。
食事の仕方がよくないこと
食事の仕方も、歯ならび・かみ合わせに影響を及ぼします。
歯ならび 原因・ 清涼飲料水の摂取(スポーツドリンクを含む)
・ よく噛まずに食べる
・ 3度の食事の量が少ない
・ 前歯でかみ切らない
・ 食事の時の姿勢に問題がある
特に清涼飲料水の取り過ぎが、見落とされがちな歯ならびを悪くする原因です。
寝相
横向き寝、うつ伏せ寝は前歯の歯ならびを悪化させます。
悪い癖(くせ)
態癖頬杖や唇の癖、爪噛み、指しゃぶりなども、歯ならびかみ合わせに影響を及ぼします。
癖を直さないと、矯正治療してきれいになった歯ならびが崩れてしまいます。
その他の原因
・ 乳歯がいつまでも抜けない(乳歯晩期残存)
・ 乳歯の早期喪失(抜けてしまったり、歯科医院で抜歯)
・ 軟組織の異常(小帯の異常)
・ 歯の形・数の異常
・ 乳歯の虫歯
・ 舌の形態異常
・ 永久歯の喪失・虫歯・萠出遅延
・ 不適切な修復物(詰め物)
口をポカンとあいたまま・口呼吸
最近、口をぽかんとあいたままテレビを見ているお子様が多いようです。
また、私(さくら総合歯科ベビーキッズ歯ならびクリニック院長)が出張で東京など大都市に行ったとき、周囲の人の口元を観察していると、口を開いて歩いている人が非常に多いことに気づきます。
特に、子供にその傾向が強いようです。
口を開けたままにしているということは、唇を閉じる筋肉がゆるんだままになっています。
その結果、下あごの骨は常に後方に引っ張られた状態となり、下あごは前方に充分発育できなくなってしまいます。
また、唇をあいたままにしていると、前歯を内側に押す力が弱くなります。
その結果、前歯が出っ張った状態になります。
上の前歯が常に唇からビーバーのように出ているお子様は、一見出っ歯のように見えますが、実は多くの場合、下あごの発育が悪いため、相対的に出っ歯に見えるだけなのです。
口呼吸の影響
口を開いているお子様は多くの場合、口で呼吸しています。
鼻で呼吸することは、人間にとってものすごく重要です。
鼻で呼吸することにより、
・ 空気が加湿、加温される
・ 脳が冷やされる
・ ゴミ等が除去される
・ 侵入してくる外敵をやっつける抗体を作る指示を出す
など、様々な処理が行われ、扁桃で身体に悪影響のある物質処理の仕上げが行われます。
ところが、口で呼吸するとこれらの処理がされないまま空気が扁桃に達し、扁桃はその処理のためパニックになってしまいます。
従って、矯正治療に訪れるお子様の多くは扁桃が腫れています。
その結果アトピー・喘息・リウマチなど、様々な病気が起こります。
人間は鼻で呼吸することによって、脳をが冷やしています。
口で呼吸すると脳の冷却が不十分となり、知能の発達に影響が出る、と口呼吸に注目している内科や耳鼻科の医師が言っておられます。
また、身長や精神発達にも影響するとも言っておられます。
もしご自身のお子様が口で呼吸しているようであれば、是非鼻呼吸に直すべきです。
そしてそのことが、歯ならびやかみ合わせにもよい影響を与えます。
舌の機能異常
舌が低い位置にある
舌は、本来上あごに軽く接した位置にあるのが正常です。
舌が緩んで低い位置にある方は、上の歯ならびが狭く窮屈になり、口をあいたままの状態になりがちです。
嚥下舌が低い位置にある方は、舌の横側に歯のあと(圧痕)がつきます。
飲み込むときに、舌が正しく動かない
食べものを飲み込むとき、舌は上あごに押しつけられるのが正常です。
ところが、飲み込むときに舌を前へ押し出す癖のあるお子様は、正しい嚥下(ものを飲み込むこと)ができません。
異常な飲み込みをする人は、唇や頬が緊張し、その結果歯ならびやかみ合わせに重大な影響を及ぼします。
これらの問題が増えてきている理由
舌・唇の機能に異常のあるお子様は、近年増加傾向にあります。
その理由は、
・ 離乳が早すぎる
・ 母乳でなく人工乳で育てる
・ おしゃぶりを早くやめさせすぎ
・ 色々な物をなめるのをやめさせる
・ 早く歩行させる
などが指摘されています。
食事の問題
よくかまずに食べる
日本人が1日に噛む回数は、昭和初期に比べて約半分に減ってしまったそうです。
あごの発育は、『かむ』という行為により刺激され、促進されます。
かむ回数が少なくなれば、逆にあごの発育は悪くなります。
現代人は、歯の大きさが僅かに大きくなってきている(下記)にも関わらず、あごの発育が悪くなってきており、その結果歯ならびの悪いお子様はどんどん増えています。
最近の若いタレントさんと、ベテランの俳優さんの顔貌を比較すれば、あごの発育が悪くなってきていることは、一目瞭然です。
江戸時代、徳川幕府の歴代将軍は、歯ならびが悪かったそうです。
当時はよくかまなければ食べられない物が多かったのですが、将軍になった人たちは、かむ必要性の少ない、当時としては特殊な食事を摂っていたことが原因だそうです。
食事三度の食事を15分間しっかりかんで行うと、食後30分から2時間くらい顔周辺の温度が上がり、活性化されます。
ということは、一日3度しっかりかんで食事をすれば、顎の発育のための刺激が6時間以上加わります。
残念ながら最近のお子様で、三度の食事にそれだけの時間かけている方は、あまりおられないようです。
このことが、歯ならび・かみ合わせの悪いお子様が増えた要因です。
なお、かむことが右脳の「前頭前野」という部分の発達に、強く関わっていることが
分かっています。
右脳の前頭前野は、情緒や感情のコントロールを司っています。
近年よくかまずに食事をするようになったことが、感情をコントロールできない人が
増えている原因の一つではないか、と考える人もいます。
清涼飲料水(ジュース・スポーツドリンク・乳酸菌飲料)の摂取
コンビニ・自動販売機の増加により、清涼飲料水が簡単に入手できるようになりました。
それにより、清涼飲料水を常飲するお子様が増加しています。
ところが、清涼飲料水には多量の砂糖・ブドウ糖が含まれています。
従って、飲んだあとには血糖値が上がります。
血糖値が上がることにより、肝心な三度の食事の量が大幅に減ってしまいます。
その結果、いくら一口を少なくし、30回程度噛んだとしても、一日に噛む回数は十分とは言えません。
その結果、顎の発育が悪くなってしまいます。
前歯でかみ切らない
小さな食材は、前歯でかみ切る必要がありません。
小さな食材ばかり食べていると、奥歯だけでかむようになってしまいます。
その結果、顎の前方への発育不足が起こります。
食事の姿勢が悪いと・・・
また、よくかみさえすればよいのか、というと、そうではありません。
食事の際の姿勢も重要です。
小さいお子様は、足のつかない状態で食事をしている場合があります。
足がつかないと姿勢が悪くなり、体が前方に傾きます。
すると、頭は上向きになり、下あごを後方に引っ張る力が加わります。
その結果、あごの発育は抑制されます。
寝相
横向き寝、特にうつ伏せ寝は歯ならびを悪くする大きな原因です。
ただし、何の対策もせず仰向けに寝かせると、呼吸に問題を起こすことがあるので注意が必要です。
寝相の影響を少なくするためには、適切な枕を使うことも重要です。
姿勢と足指&靴&靴下
姿勢が悪いと、舌が下がります。
舌が下がれば、口を閉じにくくなったり、正しい飲み込みが出来なくなります。
姿勢が悪くなるのは、足と靴の問題・生活習慣と関連している可能性が指摘されています。
足の問題−足指
浮き指は、姿勢や関節に強い影響を及ぼすことを示す文献があります。
現代の子どもたちは歩行経験が少なく、足指が十分に使えていません。
また、下に記した靴の問題も、足指の問題を誘発する事がわかっています。
足の問題−靴下
手袋は、ほとんどの場合5本指です。たまに親指以外が1つになった手袋もありますが、雪だるまを作るとき以外にメリットはないのではないでしょうか?
それでは靴下はどうでしょう。靴下はほとんどの場合、指をまとめて入れるチューブソックスです。
これは5本の指をくっつけようとする力がかかります。
裸足で立った場合のバランスと、裸足の親指から小指にかけて輪ゴムをかけたときの体のバランスを比べると、後者はバランスが悪くなります。
つまり、靴下も体のバランスにとって好ましくない、と さくら総合歯科ベビーキッズ歯ならびクリニック院長は考えています。
それでは、どうすればよいのでしょう?
ゆびのば体操
現代の先進国の人の足指は、多くの場合変形しています。そこで足指の変形を治す
「ゆびのば体操」
を行うことをお勧めします。
サポート力のある5本指ソックス
足の指の変形による影響を少なくし、変形を改善する目的で特殊な5本指ソックスが開発されています。
そのソックスは当院にてお取り扱いしています。
足の問題−よくない靴
日本は、もともと靴がなかった国です。西洋から入った靴文化は、実は正しく伝わらず、日本人は靴の正しい選び方、履き方を知りません。
その結果、日本人の足の状態は、西洋人はもとより東洋人の中でも際だって問題が多いそうです。
なぜそうなったかは詳しい検証はされていませんが、一度履いたら殆どはいたままになる生活環境と異なり、しょっちゅう脱ぎ履きしなければならない日本では、
「履きやすい靴」
を選択する傾向があります。
また、安価な靴をゆるめに履くことにより、足を痛めている可能性が指摘されています。
足の指に問題が起こったり、合わない靴を履いていると、姿勢に悪影響を及ぼすことが知られています。
生活習慣の乱れ
昭和時代、各家庭にソファーは普及していませんでした。あっても応接間くらい、日常ソファーにもたれて座る、ということをしていませんでした。
そもそも、だらだらとした姿勢をしていれば、親や祖父母に注意されるものでした。
その時代、ベビーカーも殆どありませんでした。ベビーカーは一見幼児に負担がかかりませんが、実は慎重に選ばないと、将来姿勢に悪影響を及ぼす可能性が、指摘されています。
その他の悪い癖(悪習癖)
以下のような癖が原因で、かみ合わせが悪くなることがあります。
・ 頬杖
・ 腹這いになり、あごをどこかに押し当てて本を読む
・ 横向きに寝る
・ 舌で前歯を押す
・ 指しゃぶり
・ 爪かみ
・ ショルダーバッグ
・ 横を向く時間が長い
・ パソコンの使用
・ 下唇をかむ・巻き込む
・ ポータブル型ゲーム
・ 読書
など、思いもよらない様々な日常動作が、歯ならびや噛み合わせの異常につながります。
たとえば、ポータブル型ゲームや読書をすると、顔を下に向ける時間が長くなります。
すると、下あごが前に出て受け口になることがあります。
歯の問題
永久歯が大きくなっている
永久歯のサイズが、全ての歯種に於いて大きくなっていることが、日本大学松戸歯学部の金澤英作教授らが2005年に発表した研究で示されました。
永久歯のサイズが大きければ、当然歯ならびは悪くなりやすくなります。